omatsuri doctorsは、多様化する医学生・医師の『好き(好奇心)』に焦点を当てたキャリア名鑑です。名鑑を使って、旅先で気になる仲間に連絡して、新しい出会いや旧友との再会を果たすことができます。新しい仲間から、お誘いが来ることもあります。本キャリア名鑑は、医学生・医師の個性溢れるキャリア選択とネットワーキングを応援していきます。
今回は、松本 一希(まつもと かずき)さんをインタビューしてきました。
松本 一希(まつもと かずき)
沖縄県立八重山病院総合診療科 専攻医1年目/千葉大学大学院博士課程 先進予防医学専攻2年
肩書き:Clinician × Researcher
好きワード:旅 × まちづくり × 沖縄
略歴:名古屋生まれ名古屋育ち。
2015年 東海中学校・高等学校を卒業し、京都大学医学部医学科に入学。
2021年 京都大学医学部医学科を卒業。名古屋市にある大同病院で初期臨床研修を開始。
2022年 並行して千葉大学大学院博士課程に入学。予防医学・社会疫学を専攻。
2023年 初期臨床研修を修了。石垣島に場所を移し、島医者を養成する沖縄県立八重山病院の総合診療専門医プログラムに所属。
メディカルジャーナリズム勉強会「伝え手」育成集中プログラム2期生。
Q.1 趣味や休日の過ごし方を教えてください。
素敵な景色を見ながら音楽を聴いたりお酒を飲むのが好きです。まとまった休日があれば国内外に旅に出ています。島に住むので、キャンプやシュノーケリング、ドローンといった自然を楽しむ趣味を始めたいと思っています。
Q.2 憧れている肩書きを教えてください。
(*Clinician 臨床家 / Researcher 研究者 / Educator 教育者 / Entrepreneur 起業家 / Politician 政治家 / Activist 活動家 / Policy maker 政策決定者 / Creator クリエイター / Performer パフォーマー / etc.)
Clinician × Researcher です
Q3.『好き(好奇心)』のキーワードを教えてください。
旅 × まちづくり × 沖縄 です。
Q4. 一つ目の好きワード『旅』に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
大学生になるまで飛行機に乗ったことがなく、国内旅行もほとんど経験がなかったのですが、大学3年生の時に英語の通じないモロッコに行き、サハラ砂漠を訪れた際、とても大きな刺激を受け、その後発展途上国に足を運ぶようになりました。学生時代はお金がなかったので、家庭教師や模試採点などのアルバイトを詰め込んで稼ぎ、物価の安い国をよく訪れていました。最初は観光地や街の景観を見ることを楽しんでいましたが、次第に社交的な途上国の人と触れ合うことを通じて、その国の文化、歴史、宗教、政治、経済事情といった社会を知ることも好きになりました。
Q5. 『旅』に関してこれまでやってきたこと、今やっていること、これからやろうとしていることがあれば教えてください。
アジアやアフリカを中心に27カ国を訪れました。僕は空想で考えを思い巡らすのが苦手なタイプで、実際に足を運び、様々な人の生き方や環境に触れることで初めて、世界で起きている物事に関心を持つようになりました。
視点がブラッシュアップされるため、これからも定期的に旅に出たいと思います。欧米には正直あまり興味がありませんが、どこかのタイミングで海外に住む経験もしたいですね。
Q6. 二つ目の好きワード『まちづくり』に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
僕は元々、発展途上国や国際機関など活躍の場が豊富な感染症医に憧れていましたが、今回のコロナの流行で浮き彫りになったのは、コロナの毒性自体よりもむしろ日本社会の「格差」問題でした。夜の街や飲食店で生計を立てている方々がより大きな経済的打撃を受け、時に差別の対象となり、生活に困窮し健康を害してしまうこの社会構造に、最も大きな問題意識を持ちました。生まれた国や地域、家庭の経済力によってその人の寿命が決まってしまう。こうした貧困や生活環境など社会階層間・地域間の格差によって「健康格差」が生まれています。健康は遺伝子や生活習慣などの生物学的要因だけで決まる、と多くの人が信じていて、病気になって受診した人に対して医療従事者が自己責任論を振りかざす場面を何度も目にすることがありますが、健康は「個人の社会要因」や、「環境としての社会要因」にも左右されるのです。今や発展途上国でさえ、感染症よりも、生活習慣病と呼ばれる慢性疾患が問題になり始めていて、この「健康の社会的決定要因」の重要性を痛感する出来事をいくつも経験しました。
この健康格差問題を解決するには、地方自治体、学校、職場、建造環境、ソーシャルキャピタルなど様々な介入ポイントがありますが、僕は「まちづくり」に注目しました。
例えば、医師が患者さんに、「健康のために歩きましょう」と伝えたとします。そこでもし、地域に歩道がしっかり整備されていなかったとしたら、残念ながら実行は難しいでしょう。同様に、定年後、外に出ることなく孤立して健康を害している高齢者の方に、「外出して、つながりを作りましょう」とアドバイスしても、行きたくなるような場所が地域になければそのアドバイスは響きません。
しかし、日差しが強い地域でも快適で安全に利用できる歩道を整備したり、遊ぶ場所がない若者のために集まりたくなるような場所を作り、そこに自然と健康になるしかけを散りばめたり、子どもや高齢者、外国人など多世代が交流できる空間を設計したりできたら…。町の施設や構造物が、健康になるための処方箋となりうるのです。都市計画やまちづくりに健康面から関わることができれば、誰一人残さず地域住民全員の健康に貢献できると思いました。
Q.7 『まちづくり』に関してこれまでやってきたこと、今やっていること、これからやろうとしていることがあれば教えてください。
臨床業務と並行し、大学院で健康の社会的決定要因の研究をしています。具体的には、「どんなまちに住むと、人が健康で幸せになるのか」をテーマとしています。臨床では総合診療医というジェネラリストを目指していますが、研究では都市計画×予防医学の分野で専門性を築きたいと思っています。後述する沖縄においては、今後複数の基地の返還が予定されていて、新たな街がまさにこれから作られようとしているため、そのようなまちづくりに関わりたいと考えています。
Q.8 三つ目の好きワード『沖縄』に憧れるようになったきっかけは何だったのでしょうか?
今の妻とは沖縄で出会いました。妻が住む沖縄に頻繁に通ううちに、自然と沖縄が好きになっていきました。
今では沖縄の海が大好きですし、同時に都会よりも自然に囲まれた生活を求めるようになりました。沖縄の貧困や教育、健康、基地、差別といった社会問題にも強い関心を持っています。
自分が生まれ育った沖縄を良くしたい、という妻の熱意に惹かれ、僕自身も一緒に沖縄に貢献したいと思っています。
Q.9 『沖縄』に関してこれまでやってきたこと、今やっていること、これからやろうとしていることがあれば教えてください。
目標は、離島での総合診療専門研修を通して、沖縄で必要とされるプライマリケアの技術を磨き、限られた環境でも目の前の人に良い医療を届け、悩みを解決できる医師になること、沖縄の都市計画に役立てるような研究をすること、1人の沖縄県民として自然を楽しみながら充実した生活を送ることです。
Q.10 MATSURIは大学の外に飛び出して、自分の『好き』を広げて、深めて、新しい知識や人と繋がる経験ができる場所を目指しています。医学部を目指す中高生や医学生の後輩に何か応援メッセージをお願いします。
自分が何をやりたいのか、大学生活の終わり頃まで僕は全くわかりませんでした。というか、考えたことがありませんでした。MATSURIでは多様な価値観に触れ多様な生き方をしている人に触れることができ、自分を見つめ直し、やりたいことを見つけるのに大変有用だと思います。このMATSURIのようなコミュニティに若いうちに出会えることが羨ましいくらいです。
是非ともお待ちしております!