omatsuri doctorsは、多様化する医学生・医師の『好き(好奇心)』に焦点を当てたキャリア名鑑です。旅先で気になる仲間に連絡して、新しい出会いや旧友との再会を果たすことができます。新しい仲間から、お誘いが来ることもあります。本キャリア名鑑は、医学生・医師の個性溢れるキャリア選択とネットワーキングを応援していきます。
今回は、千手 孝太郎(せんじゅ こうたろう)さんをインタビューしてきました。
千手 孝太郎(せんじゅ こうたろう)
関西医科大学医学部医学科卒
下越病院 初期研修1年目
肩書き:Clinician × Educator × Activist
好きワード:総合診療医 × 初等教育 × アート
略歴:兵庫県西宮市出身。須磨学園中学校・高等学校を卒業後、関西医科大学へ進学。
2023年3月に関西医科大学を卒業、来年度より新潟県の下越病院にて初期研修を予定している。
在学中は、日本プライマリ・ケア連合学会 学生・研修医部会 関西支部代表を務め、医学生団体での活動や学会発表、学会運営、医学生ライターとしての執筆など、さまざまな活動に注力した。
また、自身の趣味が高じ、狂言師としても活動している。
Q.1 趣味や休日の過ごし方を教えてください。
趣味は、大きな括りで言うと芸術鑑賞です。好きなアーティストのLIVEやFESに行って、自分の好きな音楽を見つけたり、新旧問わず様々なジャンルの舞台、映画、ドラマ、書籍などに触れています。
そこで感じた気持ちや想い、新たに生まれた”推し”を友人に語る時間も好きですね。
Q.2 憧れている肩書きを教えてください。
(*Clinician 臨床家 / Researcher 研究者 / Educator 教育者 / Entrepreneur 起業家 / Politician 政治家 / Activist 活動家 / Policy maker 政策決定者 / Creator クリエイター / Performer パフォーマー / etc.)
Clinician × Educator × Activist です。
Q3.『好き(好奇心)』のキーワードを教えてください。
総合診療医 × 初等教育 × アート です。
Q4. 一つ目の好きワード『総合診療医』に憧れるようになったきっかけは何だったのでしょうか?
小学校5年生の時、両親と一緒に私を育ててくれていた祖母を亡くし、ただ祈るしか出来なかった途方もない無力感から医師を志しました。
しかし、学業面で追いつかず、医学部進学から逃げようと考えていた中で、目に入った1枚の勉強会のお知らせが、私の『総合診療』との出会いです。
その勉強会は、大阪医科薬科大学病院 総合診療科科長 の鈴木富雄先生が、実際の症例を挙げながら、疾患だけではなくその人の生活、ひいては人生に関わるさまざまな要素に触れ、その患者さんがどうすれば幸せに過ごせるかを考えていくものでした。
先生がおっしゃった、総合診療医は『人を診る』という言葉に衝撃を覚えたことは今でも忘れません。人と交わり、対話することが好きだと感じていた自分にとって、これは天職だと思い、総合診療医を志しました。
Q5. 総合診療医を志望してこれまでやってきたこと、今やっていること、これからやろうとしていることがあれば教えてください。
医学部在学中の6年間は、日本プライマリ・ケア連合学会 学生支部に所属し、関西代表として、全国の医学生と共に勉強会に参加、企画運営をしていました。
また、プライマリ・ケア連合学会の学会運営に声をかけていただき、来年度の5月に名古屋で行われる、第14回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会の会場企画であるソーシャルアクティビティーの学生総括、健康づくりプロジェクトのリーダーをさせて頂いています。
今後に関して、まずは、4月から始まる初期研修に全力でぶつかっていきます。
私の初期研修は、1年目が名古屋徳洲会総合病院、2年目が新潟県の下越病院という一風変わったたすきがけ研修です。
都市の急性期中核病院と、地方の小規模研修病院という正反対の毛色の病院で研修を行うため、その病院に求められるものも違うでしょう。
それぞれの地域で必要な医療を、患者さん中心に考えていけるよう、どの科であっても、患者さんの背景やその土地の地域性を考えることを怠らない研修にしようと思っています。
Q6. 2つ目の好きワード『初等教育』に興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか?
私が生まれ育った兵庫県西宮市は、教育熱心な地域で、駅前に中学、高校、大学、ひいては小学校受験に対する学習塾、予備校が林立しています。私自身もある種それが当たり前の環境で育ちました。
医学生になったある時、病院見学で地元の病院を訪れると、『子どもの中学受験が失敗した』ことで自死を図ったお母さんが搬送されてきました。
受験戦争で、合格不合格が白黒はっきりつくことで、人の考え方を豊かにするための教育があらぬ方向に進んでしまっていたのです。
受験勉強は正義でも絶対悪でもなく、その勉強を通じて、自身の思考回路を辿る訓練となり、論理的に物事を考えることができるものだと考えています。
このままでは、教育が本来の意味をなさなくなると焦りを感じました。
総合診療医として、その人自身、そしてその人が生きる地域を考えたいと思う中、教育、特に子どもが独り立ちできる年齢ではないために親と子が一番密接に関係し合う、中学校までの教育(初等教育)にも目を向ける必要があると考えました。
子どもたちだけではなく、「子どもたちを支える大人」にとってもより良い教育環境が必要だと感じたのです。
Q.7 初等教育に関してこれまでやってきたこと、今やっていること、これからやろうとしていることがあれば教えてください。
教育に対して元々関心を持っていたため、学生時代は、小学生から大学生まで、講師として教科を問わず幅広く教えてきました。また、母校でのキャリアや性教育に関する講演会、医学生向けのコーチング活動などにも従事しています。
一講師として教えることはできますが、これでは自分が抱いた危機意識は根本的には解消されません。
そのため、教育現場に自分自身がしっかり身を置く必要があるなと感じました。日本の現状の教育論を学び、教育現場の共通言語を得るために、来年度から、初期研修と並行して、教育学部へ進学し、教員免許を取得する予定です。
Q.8 3つ目の好きワード『アート』に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
非常に広い概念ですが、心を豊かにするという観点において、教育以外にもアートに着目しています。
昔から芸術鑑賞が趣味で、その中でも、古典芸能の一つである狂言が好きで、幼少期から祖母と一緒に見に行っていました。
古典文学であるため難解な言葉は多いのですが、フリとオチが効いた話の展開やことばあそび、独特の空気感、衣装のおしゃれ感など、自分のストライクゾーンにすっと入ってきました。
少し疲れていたり、気が重くなってしまっても、このようなアートは、自分一人では見えない世界を見せてくれるので、明日を生きる活力をくれると思っています。
生活を営む上で必要不可欠ではないものの、生活に彩りをもたらしてくれる、つまり、心を豊かにしてくれると感じるアートが、僕の3つめの”好き”のキーワードです。
Q.9 アートに関してこれまでやってきたこと、今やっていること、これからやろうとしていることがあれば教えてください。
自分の好きが高じ、声をかけてもらった御縁から、狂言師として舞台に立たせて頂いています。
観る側ではなく、自分が演じる側に立つことで、よりその作品の面白さも感じられますし、また、受け手の反応や表情を見ることができることも非常にワクワクします。
アートの観点において、”ことば” つまり言語感覚もアートの一つだと思っています。
その中で、様々な方々にインタビューを行う、ライターとしての活動も行っています。
Q.10 MATSURIは大学の外に飛び出して、自分の『好き』を広げて、深めて、新しい知識や人と繋がる経験ができる場所を目指しています。医学部を目指す中高生や医学生の後輩に何か応援メッセージをお願いします。
自分が知りもしない、外の世界に一歩踏み出すことは、非常に怖いことでしょう。
また、とりあえず踏み出したものの、
「あの人はすごいよね…、それに比べて僕は…」
と圧倒され、尻込みすることも多くあるでしょう。私自身がそうでした。
その中で、唯一、尻込みせずに心地よく話せることがあります。
それは ”好きなこと” です。
自分が興味あること、好きなこと、推しの話…これなら気後れすることなく話せるのではないでしょうか?
知らないことがあるのは当たり前です。ただ、自分のことを話し、周りと触れ合い、好きなものを聞き、知り、そして自分も少しわかるようになっていく。
ほんの些細なことでも知らない世界を知るだけで、ワクワクしてきます。
ぜひ、皆さんの好きなこと、教えてください。友達になってくれませんか?
(…安心してください、高い壺を売るようなことはしませんから笑)